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刀根里衣氏からマレーク・ベロニカ氏宛ての手紙 その2

親愛なるマレーク・ヴェロニカさま、

 

6月に入り、こちらイタリアでは初夏のような日々が続いております。マレークさまはお元気でいらっしゃいますでしょうか。

 

お手紙のお返事をいただけて大変嬉しく思っております。

受け取った時は感動で胸がいっぱいになりました。素敵な写真も添付してくださってありがとうございます。思わず「ピッポがマレークさんのところにいる!」と叫んでしまいました。(ピッポとは私の絵のカエルのことです。)そして、陶器のお皿の共通点があることを知り、さらに嬉しくなってしまいました。マレークさんもキシュゴムボシュでワークショップをされていたのですね。そこですでに私の絵に出会っていたとは、驚きでした。不思議な縁を感じます。

 

最近、息子は「ラチとライオン」の絵本にも興味を持ち出しました。

なぜかというと、この絵本には息子の大好きなヘリコプターが出てくるからです。ちなみに息子はヘリコプターのことを「こぷた」と言います。そしてなぜか最初のページの建物のことを「バス!」と言って譲りません。「ラチとライオン」はアニメ化もされたのですね。インドで一等賞を取ったとは、素晴らしいです。ラチはきっと今でもヘリコプターで世界中の国を飛び回っているのでしょうね。

 

私の絵本もささやかながら何ヶ国かの言語に翻訳されているのですが、その国の言葉が分からずとも、文化や習慣が違っていても、絵でコミュニケーションが取れる、想いを伝えることができるというのは、まるで魔法のようだと感じることがあります。例えばブルンミをじっと眺めている息子は、話の内容がまだわかる年齢ではありませんが、間違いなく何かを感じています。もしどこかの国の子供がこうやって私の絵本を眺めてくれていたら、何かを感じてくれていたら感無量です。私が30年以上前にマレークさんに出会ったように、世界中の子供たちもこうやって世界中の作家さんたちに日々出会っているのですね。つくづく絵本は世界共通語だと感じます。

 

 

また、絵本作家になってからさまざまな国籍の子供達とワークショップを通して交流する機会もいただきました。ワークショップではよく、日本の伝統的な遊び「折り紙」を子供達に教えるのですが、みんな楽しみながら一生懸命に折ってくれます。(折り紙とは正方形の色紙を折って動物や生活道具などを作る遊びです。)私の絵本に興味を持った子供たちが、日本の文化に少しでも触れる機会があるのはとても喜ばしいことです。それがきっかけで日本に興味を持ってくれるかもしれないですしね。「本を読む」ということが他の国の文化を知ることにつながっていくのはとても素敵なことですね。

 

 私はまだまだ駆け出しの絵本作家でこの先自分のやりたいことを実現できるのだろうか、自分の伝えたいことはちゃんと伝わっているのだろうかと不安になることも多々あります。でも、マレークさんがお元気に現役で制作活動されていて、さらに、「まだやりたいことがたくさんある」という言葉を読んで、私も小さいことで悩まずにもっともっと頑張らねば!と元気をいただきました。生涯現役でいらっしゃるとは本当に素晴らしいことですね。それは私の人生の大きな目標の一つでもあります。長く作家活動を続けていく秘訣などはありますか?

現在、ユーモアたっぷりの6匹うさぎの絵本を作っています。息子が生まれてからは、自分の生活が180度変わりました。それはまるで、自分の子供の頃に経験したことを再び体験しているようです。大人になってどれだけのことを見過ごして、忘れてしまったのかということに気づかされました。次回は、そこからヒントを得た子供目線に戻った物語を作ってみたいと考えています。

 

最後になりましたが、マレークさんが素敵な写真を送ってくださったので、私からも写真を送らせていただきます。息子が大好きな絵本ブルンミのたんじょうびとラチとライオンを読んでいるとことです。ブルンミの新刊が出るとのこと、とても楽しみです。息子へのクリスマスプレゼントが一つ決まりました。

 

イタリアではワクチン接種が進み、以前のような日常生活に戻りつつあります。ハンガリーでも規制緩和が進んでいると聞きました。今年も暑い夏がやってきそうですが、どうぞお身体に気をつけてお元気でお過ごしください。

 

敬具

 

令和3年6月8日

刀根里衣

 

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